世界の売春の歴史|現代の海外売春の事情まとめ~The history of prostitution in the world

古代(紀元前~紀元後初期)

方法と形態

宗教的売春: 古代バビロニアやメソポタミアでは、女神イシュタル(アスタルト)の神殿で「神聖娼婦」が存在し、性的行為が宗教儀式の一環とされました。これは神への奉仕であり、参加者は対価として穀物や金銭を納めることが一般的でした。

都市での売春: 古代ギリシャやローマでは、売春は公然と行われ、娼婦は「ヘタイラ」(教養ある高級娼婦)や「ポルナイ」(低級娼婦)に分けられました。ヘタイラは富裕層の男性と哲学や音楽を楽しむ役割も果たしました。

理由

経済的困窮(奴隷や貧民が生きる手段として)、宗教的義務、社会的娯楽の提供。

対価

金銭、食料、布、貴金属など。ローマでは専用のコイン「スペラ」(売春用の通貨)が使われることもありました。

時代背景

都市化と階級社会の成立により、性産業が商業化。男性中心社会で女性の地位が低く、売春は一部の女性にとって避けられない選択肢でした。

中世(5世紀~15世紀)

方法と形態

ヨーロッパ: キリスト教の影響で売春は「罪」とされつつも、都市部では公娼制度が発展。教会や貴族が黙認し、娼館が運営されました(例: 南フランスの「公認娼館」)。

イスラム世界: ハレム制度や奴隷市場で性的奉仕が行われ、売春は非公式ながら存在。富裕層が奴隷女性を買うことが一般的でした。

アジア: 中国では唐代に「妓女」が詩や舞踊を披露し、性的サービスを提供。日本では平安時代に遊女が登場し、芸能と結びついていました。

理由

貧困、戦争による孤児や未亡人の増加、社会的需要(兵士や商人の娯楽)。

対価

金銭、衣類、保護(特に戦争孤児の場合)。中国では詩や書が対価に含まれることも。

時代背景

封建制度下で女性の自立が難しく、売春は生存戦略として機能。キリスト教の道徳観と現実の需要がせめぎ合う時代。

近世(16世紀~19世紀)

方法と形態

ヨーロッパ: ルネサンス期以降、都市化が進み、売春はさらに組織化。フランスでは「メゾン・ド・トレランス」(公認娼館)が登場。イギリスでは産業革命に伴い、労働者階級の女性が売春に流れるケースが増加。

植民地時代: アフリカやアジアの植民地で、ヨーロッパ人男性が現地女性を性的搾取。インドでは「デーヴァダーシー」(神に捧げられた女性)が性的サービスを強いられる例も。

日本: 江戸時代の吉原遊廓が有名。遊女は契約制で、年季奉公のように働きました。

理由

産業革命による貧富の差の拡大、植民地支配による搾取、伝統的な性産業の継続。

対価

金銭が主流に。吉原では米や借金免除が対価の一部となることも。

時代背景

近代国家の形成と資本主義の台頭で、売春が経済システムに組み込まれる。性病の流行(梅毒など)が社会問題化。

現代(20世紀~現在)

方法と形態

合法化と規制: オランダやドイツでは売春が合法化され、労働者としての権利が保障される一方、アメリカや日本では非合法化が進む(日本では1958年の売春防止法)。

人身売買: 東南アジアや東欧では貧困層の女性が国際的な性産業に組み込まれ、強制売春が問題に。

インターネット: 現代ではオンラインでの売春(「シュガーダディ」文化(日本ではパパ活援交などという)やウェブカメラモデル(チャットレディ))が増加。

理由

貧困、経済的搾取、性的自由の追求、グローバル化による人の移動。

対価

金銭(現金やデジタル決済)、物質的支援(家賃や学費)、社会的なつながり。

時代背景

女性の地位向上が進む一方、経済格差や戦争・紛争が売春を存続させる要因に。性産業は多様化し、デジタル化が進む。

 

売春の歴史 まとめ

売春の歴史は、社会構造や経済状況、文化的価値観に深く根ざしています。古代では宗教や生存手段として、近世では経済的搾取や娯楽として、現代ではグローバル化と技術の影響を受けながら変遷してきました。対価も時代ごとに多様で、物々交換からデジタル通貨まで広がっています。地域や時代によって異なりますが、共通するのは、売春が常に権力関係や経済的必要性と結びついてきた点です。

 

現代における海外(世界)の売春

現代の売春は、各国の法制度や文化的背景によって多様な形態を取ります。

オランダ

法的状況

  • 売春は2000年に合法化され、性労働者は労働者としての権利(健康保険、年金など)が保障されています。
  • 売春宿(ブローテル)の運営も合法で、厳格な規制のもとライセンス制が導入されています。
  • 未成年者との性行為や人身売買は厳しく禁止。

社会的背景と運用

  • アムステルダムの「デ・ヴァレン」(赤線地帯)は世界的にも有名で、窓辺に立つ性労働者が観光名所となっています。
  • 合法化の目的は、性労働者の安全確保と犯罪組織の排除でしたが、実際には人身売買や不法移民による地下売春が依然として問題。
  • 性労働者は定期的な健康診断が義務付けられ、性感染症の予防が徹底されています。

対価

  • 主に現金または電子決済。
  • 料金はサービス内容や時間で異なり、平均30分で50~150ユーロ程度。

特徴

  • 合法化により性労働者の地位向上を目指したものの、東欧からの移民による非合法な売春が根強い。
  • 2021年にはアムステルダム市が赤線地帯の縮小を提案し、観光依存からの脱却を図っています。

ドイツ

法的状況

  • 2002年の売春法により合法化。
  • 性労働者は自営業者として登録し、税金を納める義務があります。
  • 売春宿の運営も合法で、衛生基準や労働条件が規制されています。
  • 人身売買や強制売春は違法で厳罰化。

社会的背景と運用

  • ケルンの「パシャ」やフランクフルトの売春宿など、大規模な施設が存在。
  • 合法化により性産業が経済の一部として機能し、年間約150億ユーロの市場規模を持つと推定されています。
  • 東欧やアフリカからの移民による非合法売春が問題化しており、労働条件の悪化や搾取が報告されています。

対価

  • 現金が主流で、サービス内容により20~200ユーロ程度。
  • クレジットカード決済を受け入れる施設も増加。

特徴

  • 性労働者の権利保護が進む一方、合法化が逆に需要を増やし、人身売買の温床となっているとの批判も。
  • 政府は規制強化を検討中。

スウェーデン

法的状況

  • 「北欧モデル」として知られ、1999年に売春の購入を違法化(最高1年の懲役)。
  • 売春行為そのものは犯罪ではなく、性労働者は保護対象。
  • 人身売買や搾取は別途厳しく取り締まり。

社会的背景と運用

  • 売春をジェンダーに基づく暴力とみなし、需要側(主に男性)を罰することで根絶を目指す。
  • 路上売春は減少したものの、オンラインでの売春が急増し、取り締まりが難しい状況。
  • 性労働者への支援プログラム(住居や職業訓練)が充実。

対価

  • 非合法な購入のため、金額は交渉次第で20~100ユーロ相当が多いとされる。

特徴

  • 北欧モデルはノルウェー、アイスランド、フランスなどにも影響を与えたが、性労働者が地下に潜り、支援を受けにくいとの批判も。

日本

法的状況

  • 1958年の売春防止法により売春は違法。
  • 「自由恋愛」として私的な合意に基づく性行為は規制対象外であり、風俗産業がこのグレーゾーンを利用。
  • ソープランドやデリヘルなど、実質的な売春が行われる業態が存在。

社会的背景と運用

  • 法的には禁止だが、警察の摘発は限定的で、風俗産業は年間約2兆円規模と推定。
  • 東京の歌舞伎町や大阪の飛田新地など、事実上の売春地帯が公然と運営。
  • 人身売買や外国人労働者の搾取が問題視されている。

対価

  • 現金が主で、サービスにより1万円~10万円以上。
  • チップ文化はないが、高級店では追加料金が発生。

特徴

  • 法と実態の乖離が顕著。
  • 性労働者の健康管理や権利保護は不十分で、合法化の議論がたびたび浮上。

タイ

法的状況

  • 1960年の売春禁止法で違法。
  • 実践上は黙認され、バンコクのパッポンやパタヤのウォーキングストリートで公然と行われる。

社会的背景と運用

  • 性産業は観光業の大きな柱で、年間数十億ドルの経済効果。
  • 貧困層の女性や地方からの出稼ぎ労働者が多く、搾取や性感染症が課題。
  • 警察の汚職により規制が形骸化し、未成年者の売春も根強い問題。

対価

  • 現金で、ショートタイムで500~2000バーツ(約15~60ドル)。
  • 観光客向けは割高。

特徴

  • 違法ながら事実上の合法状態。
  • 外国人観光客によるセックスツーリズムが産業を支える。

アメリカ

法的状況

  • 連邦レベルでは規制なし、州ごとの判断。
  • ネバダ州の一部地域(ラスベガスを除く)で売春宿が合法で、厳格な健康管理とライセンス制が導入。
  • その他の州では違法(逮捕や罰金)。

社会的背景と運用

  • ネバダの合法売春宿(例: ムーンライトバニーランチ)は、性労働者の健康診断と安全が確保されているが、全米では非合法なストリート売春やオンライン売春が主流。
  • 人身売買や貧困層の搾取が深刻。

対価

  • ネバダでは1時間500~1000ドル以上。
  • 非合法地域では交渉次第で50~200ドル。

特徴

  • 州ごとの法の違いが顕著。
  • オンラインでの「シュガーダディ」文化が新たな売春形態として台頭。

ブラジル

法的状況

  • 売春自体は合法だが、売春宿の運営や第三者の搾取(ピンプ)は違法。

社会的背景と運用

  • リオデジャネイロなどの都市部で盛ん。
  • 貧困や失業が背景にあり、カーニバル時期には観光客向けの売春が増加。
  • 法執行が緩く、性労働者の保護は不十分。

対価

  • 現金で、20~100レアル(約4~20ドル)。
  • 高級サービスはそれ以上。

特徴

  • 合法ながら規制が弱く、性感染症や暴力が課題。

まとめ

  • 現代の売春は、各国の法制度や文化的背景によって多様な形態を取ります。
  • 合法化を選択した国(オランダ、ドイツ)では性労働者の権利保護が進む一方、地下売春の撲滅は困難です。
  • 北欧モデル(スウェーデン)や違法ながら黙認する国(タイ、日本)では、需要の抑制や実態との乖離が課題となっています。
  • 対価は現金が主流ですが、デジタル化や物質的支援(家賃、学費)も増え、グローバル化と技術の進展が新たな形態を生み出しています。

 

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